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葉山の夕陽
カメラはハッセルブラド(6×6㎝)フイルムはフジのプロビアだったと思う。海の色から判断して、マゼンダの20番(ゼラチンフィルター)を使っていると思う。
フイルムいいねぇ、今さらフイルムには帰れないけれど、やっぱり違う。
エッ何が違うかって
一番に違うのはデティール。太陽、その周辺の朱色から海、シルエットの陸に至るまでの微妙な色の変化、これはデジタルでは出ないねぇ、僕の体験では、デジタルカメラでは、どうしてもうまく出なくてね(高級機は知らないけれど)
ただこれは、大きいフイルムとハッセルというカメラとツアイスの組み合わせという効果もあるが…
ただこのフイルムのスキャンが、何かをつくるためにサムネールでやっているので、データが小さいからちょっと難ありなんだけれど、
大きいデータでスキャンし直せば、さらにパフォーマンスがあがると思う。
こうして、昔の写真を見ると、キッチリスキャンしてデータにしておかなければと思うのだが、気持ちばかりでなかなかなのである。
エッ ハッセルブラッド
これはスエーデンのカメラで名機中の名機。
僕が駆け出しの頃、先輩たちから聞いた話では、
「ハッセルを見せるだけで仕事がとれた」と誠しやに言われていた、そんなカメラ。
高くてとても買えないから、多くの人は、ハッセルをそっくり物真似したゼンザブロニカを使っていた。
ブロニカは日本のメーカーがつくったカメラなんだけど、とても人気だった。
なぜお前が、そんな高級機を持っているかって
確かに…
これはねぇ、貰いものなの。
しかし、くれた人が凄い。
誰か、
それは
「世界一木を植えた男」といわれる、横浜国大名誉教授の、宮脇昭先生。
沙漠の視察で同行したのだけれど、会ったのはその時が初めて。
中国のレストランで紹介されたのだけれど、名刺を交換した時。
「一般社団法人 日本写真家協会会員」という僕の肩書を見て、
「本物かどうかはすぐ分る」とえらいタカビーなの。
そして
「君はタバコを吸うか」
というので
「ハイ」と言うと
「僕はタバコを吸う人は嫌いだ」と。
ムカっときたが、そこは我慢して食事をし、延々のバス旅行に出るのだが、途中のトイレットタイムの時、横に来て
「久保君、タバコはどの位我慢できるか」というので、
「いくらでも、1日でも2日でも3日でも」
そういうと、
「一日という訳にもいかんだろうから、2時間置きに休憩をとろう」と。
そして、何回目かの休憩の後、
沙漠がひび割れて、土地が死んでいく様子を調べているとき、どこからとなく、列車が走る、そんなような音が…
すると、先生は僕の顔を見て、
滅多に走らない列車に遭遇、これが奇跡の始まりだった
「久保君、列車の音が聞こえるな。沙漠を走る列車、いいねぇ」と。
だか、それを横で聞いていた「NPO地球の緑を育てる会」の理事長の石村さんがいった。
「ここを走るのは包蘭州線なんだけど、一日に1、2本しか走らないから多分、違うと思いますよ」
その言葉が終るか終わらないうちに
「あっ来た」
そう言って、先生が走った(80歳を超えているのに元気がいい)
先生が走ったら僕も走らないわけにはいかない。
ダーと走って、3枚シャッターを切った。
横を見ると、先生がちょっと小高い所からおりてきて
「久保君、やっぱり列車は前から撮らなきゃだめだよねぇ」と、
どうやら、間に合わなかったらしい…
その時だった
「久保君、君に僕がドイツに留学している時に買ったカメラをあげよう。同じアングルでカラーとシロクロが撮れるカメラなの」と、
それを聞いて、ハッセルだなと判断したので
「先生、もしかしてハッセルブラッド」
そう聞くと
「そうハッセル、重くてもう使わないから」と。
今日のこの写真(葉山の夕陽)は、いただいたハッセルブラッドで撮ったもの。
実は、そのカメラを横浜の先生のオフィースに受け取りに行った時
「アマゾンに行こう」と誘われて僕はアマゾンに行ったのだが、それはまた今度。
葉山のこの写真は、そのカメラで撮ったもの。
先生はつい先日、他界されてしまったが、僕にとって忘れ得ぬ人となったのである。