カブト虫
この姿、昔の武士の侍が…という感じ。
背中の何か所かに傷があるのが、戦場を潜り抜けてきた兵(つわもの)という印象を与える。
そんなことを考えていたら、司馬遼太郎の歴史小説「項羽と劉邦」のクライマックス、「垓下の戦い」の項羽と虞の別れのシーンが映像となって、脳裏に浮かんだ。もちろん、想像である。
項羽と劉邦
僕の記憶では確か、始皇帝亡き後の覇権争い。
家柄がよく、武勇に勝れた項羽と、ヤクザ上がりだが、負けても負けても人がついてくるという程、人望のある劉邦の戦い。
この二人、合計100回戦って、99回項羽が勝利し、99回、劉邦が負けているのだが、最後の垓下の戦いで劉邦が勝利して天下をとったという話。
99回も勝ち続けて天下をとれなかった男と、最後の一勝で天下をとった男の物語
そこに、何かがあって、人気となったのだと思うが、
「四面楚歌」という有名な言葉は、この最後の戦い、垓下の戦いの山場のシーンを現した言葉なのである。
四面楚歌
簡単に説明すると、劉邦は、この時もまた、不利で形勢が悪かった。
しかし、参謀が優れていた。
少ない兵を多く見せるために牛を集め、牛の角に松明をつけ、夜に火をつけ走らせながら、兵全員に、楚の歌を歌わせたのである。
項羽は、夜襲をかけられ、気が付けば回りはすでに敵だらけ、もはや、これまでかと観念した。
しかし、一緒にいた妾の虞を死なせるわけにはいかないという状況で
「力抜山兮気蓋世 時不利兮騅不逝 騅不逝兮可奈何 虞兮虞兮奈若何」
《力は山を抜き気は世を蓋う 時に利あらず騅(馬のこと)ゆかず 騅 のゆかざるをいかんせん 虞や虞や汝をいかにせん》という詩をつくり、虞を男装で逃がそうと。
賤妾(せんしょう) 何ぞ生(せい)に聊(やす)んぜん
それを受けた虞は
「大王のおっしゃることよく分りました。私は仰せのとおり、逃げます。そのためには、刀がないと不安なので、どうぞ大王の剣をお貸しください」
そう言って刀を受け取る。その瞬間、
「 賤妾(せんしょう)
そう言って、その刀で自ら首を切って絶えた」というのである。
虞美人草とは、その血で咲いた花と言われている。
虞美人草
真っ赤なケシの花である。
昔はそれ、花屋さんで売られていたのかねぇ、
後に漱石が小説を書き、その題名をどうするかで悩んでいた。
その時、通りかかった花屋で、真っ赤に咲いた花が目にとまった。
「この花はなんという」
漱石は尋ねた
「虞美人草です」
その瞬間に、タイトルが決まったのだと。
「虞美人草」という小説はこうして生まれたのだというのを、何かの本で読んだ記憶がある。
真っ赤なケシの花、
東京、大和市にある「薬用植物園」で撮った記憶があるが、今日は時間がない。
こういう物語が 沢山あると、面白いのにね…