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なんとなくファッションショー、そんな感じ。
ファッションショー見るの好きだったので、
「ファッションショー、行ってくれるか」と言われると、喜んで行っていた。
T字につくられた白い舞台、
Tの短い方が楽屋で、モデルはそこから現れて、T字の長い方をずっと歩いて来て、端まで来たらターンをして帰っていく。
カメラマンはTの長い方の端っこに近い方に陣取って、写真を撮るのである。
こんなキレイなショーを見させてもらい、おまけにギャラ、最高じゃん
モデルは下着は着けていないから、薄物とか、特別の服になると、男にとっては、力も入るよねぇ…
スタイル抜群の8頭身の美女が、有名デザイナーがこの日のために作った最高の服を着て、美しさを見せる舞台なのだから、そりゃぁ、楽しいよ。
君の席はそこではない。案内されたのは、なんとなんとなんと、VIP席だった、そんなことも
ある時、香港で
(英国領の時の香港)
有名ファッションデザイナーのエディラウさんのファッションショーの会場に入って(どうして僕がそこに行ったのかは忘れた)
舞台の袖で、カメラマンに混ざって写真を撮ってたら、ポンポンと背中をたたかれ、振り向くと、警備員がいて、何か言っている。
やっぱり、日本人、わかるんだね、
僕はてっきり怒られると思いながら、日本写真家協会のプレスカードを提示したところ、
「ついて来い」
手でそう誘われて、歩いてゆくと、
なんと、案内されたのはVIP席で、
「君の席は、ここだ」と
驚いてしまった。
それは、ショーが正面から見える最高の場所だった。
その時とった写真がこれ
この写真は、デユーク更家の「キレイは脚で決める」(リム出版新社)の挿絵につかわせてもらった。
末席でも、長いこと、そういう業界にいると、いろんなことがあるよね…
僕がカメラマンになった頃は、デザイナーとかカメラマンとか、ライターとかという横文字の職業が人気だったが、
「鉛筆買えばルポライター」「カメラを買えばカメラマン」といわれた時代だった。
あんたの人生、傍から見ていると、とても楽しそう、でも、そういう人の奥さんにはなりたくないね…と
岡山の田舎で育った青年が、まったく知らない世界に飛び込んで、しかも、フリーで、「よくやって来た」と、今更ながらである。
今になって考えても、
そりゃー、面白くて楽しかったが、もう一度、同じ道が辿れるかといったら、無理だね。だって、奇跡につぐ奇跡の連続で、生きてきたんだから…
そういう意味では、本当に楽しい人生だった。と、つくづくそう思っているのである。
今僕は、叔父の告別式に出席するために泊まったホテルの一室で、この記事を書いているのだが、その叔父の奥さん(ぼくはお姉ちゃんと呼んでいた)が、よく言っていた
「あんたの生き方見てると、本当に楽しそう。でもそういう人の奥さんにはなりたくない」と。
確かに確かに…である。