レイシーを恐々食べて母しのぶ
岡山の実家の隣の家には愛ちゃんというアメリカ帰りのおばぁちゃんとモトさんという爺さんの二人が住んでいた。
庭には綺麗な花がいつも咲いていた
そこに黄色くなった実がぶら下がる植物があって、
「これなに」とお袋に聞いたら
「レイシー」
そう答えてから
「もう少し熟れたら 甘くて美味しいの」と
教えてくれた
レイシー甘くて美味しい果物だった
すると、愛ちゃんが
「これはもうマーボー(僕のこと)にあげるから…」と
それから数日して、
井戸水で冷やして食べたのだけれど、
スプーンで掬って食べると、
甘くてとってもおいしかったの
ところが、
高校を卒業して東京に来ると、
よく似た実が八百屋の店先に
しかしそこに書かれている名前はニガウリ
「レイシーに似ているのだけれど」と思いながらも、
それはそれ、これはこれと思っていたのだが、
もしかしてと思って、
黄色くなるのを待って食べてみたら、まぎれもなくそれは
レイシー(お袋が言っていた)だったの、
ある家の庭先で
先日、ある家にこれがあって、
若いお母さんがそこにいたので、
写真を撮らせてもらい、
そんな話をしたら、
「あら、そうなの、これスイーツなの?…」
そういって、
チョキンとハサミで切って一つくれたの、
うん、とっても美味しかったの、
黄昏時、
その女性の姿にお袋の姿をつい思い出して…
齢をとると、
そんななんでもないことにも涙が出ちゃうの…
故郷は遠きにありて思うもの…
心の中で旅するノスタルジックジャーニー
ニガウリというより、レイシー…
ハイカラなスイーツと僕は思っているのである